バイクにも電動化の波が押し寄せてきており、各社少しずつラインアップが増えてきました。
今回ヤマハの電動バイクE01をレンタルし100kmほど試乗してきたのでレビューしてみます。
わたしは普段はホンダADV150に乗っており、その比較で語ってみます。
その方がE01単体よりはイメージしやすいのではないかと思います。
目次
ヤマハ E01とは
ヤマハの製品ページによると以下のとおりです。
「E01(イーゼロワン)」は、二輪車メーカーの技術とノウハウ、そしてEV技術を融合し、原付二種クラス(125cc以下クラス)のスクーターとしての実用性と快適性、そして短~中距離移動(通勤)に適した走行性能を備えたコミューターです。
要するに原付二種クラスの電動スクーターですね。
しかし原付二種とは言え最高速は100km/hとのこと。そして気になる航続可能距離は104kmです。
詳細はヤマハのHPで確認していただくとして、実際に気になるのはこの辺りです。
- 航続可能距離100km
- モーターならではの加速感
- 低振動、静粛性、走り心地
実証実験用モデルという位置付けで一般向けの販売はせずリースのみの取り扱いとなっていますが、レンタルすることが可能です。
スペック・仕様比較
まずはカタログスペックの確認です。
わたしが乗っているADV150(2022年生産終了)と、似たようなモデルでおそらく一番売れているPCX160と比較してみてみます。
気になる点を赤字にしています。
ヤマハ E01 | ホンダ ADV150 | ホンダ PCX160 | |
型式 | ZAD-SY13J | 2BK-KF38 | 8BK-KF47 |
全長(mm) | 1,930 | 1,960 | 1,935 |
全幅(mm) | 740 | 760 | 740 |
全高(mm) | 1,230 | 1,150 | 1,105 |
軸間距離(mm) | 1,380 | 1,325 | 1,315 |
最低地上高(mm) | 140 | 165 | 135 |
シート高(mm) | 755 | 795 | 764 |
車両重量(kg) | 158 | 134 | 133 |
乗車定員(人) | 2 | 2 | 2 |
最小回転半径(m) | 2.1 | 1.9 | 1.9 |
車両区分 | 原付二種 | 普通二輪 | 普通二輪 |
原動機種類 | 交流同期電動機 | 水冷4ストロークOHC 単気筒エンジン |
水冷4ストロークOHC 4バルブ単気筒エンジン |
総排気量(cm³) | - | 149 | 156 |
定格出力 | 0.98kW | - | - |
最高出力 | 8.1kW(11PS)/5,000 rpm | 11kW(15PS)/8,500rpm | 12kW(15.8PS)/8,500rpm |
最大トルク | 30N・m(3.1kgf・m)/1,950 rpm | 14N・m[1.4kgf・m]/6,500rpm | 15N・m[1.5kgf・m]/6,500rpm |
航続可能距離(km) | 104 | 353 | 354 |
タイヤ(前) | 110/70-13M/C 48P | 110/80-14M/C 53P | 110/70-14M/C 50P |
タイヤ(後) | 130/70-13M/C 63P | 130/70-13M/C 57P | 130/70-13M/C 63P |
ブレーキ形式(前) | 油圧式ディスク | 油圧式ディスク | 油圧式ディスク(ABS) |
ブレーキ形式(後) | 油圧式ディスク | 油圧式ディスク | 油圧式ディスク |
懸架方式(前) | テレスコピック | テレスコピック | テレスコピック |
懸架方式(後) | スイングアーム | ユニットスイング | ユニットスイング |
フレーム形式 | バックボーン | ダブルクレードル | アンダーボーン |
※ADV150、PCX160の航続可能距離は燃費×タンク容量で算出。
車両重量
ヤマハ E01 | ホンダ ADV150 | ホンダ PCX160 | |
車両重量(kg) | 158 | 134 | 133 |
E01は、車両寸法はADV150、PCX160とさほど変わるものではありませんが、重量が158kgと25kgほど重くなっています。
電気自動車は重くなるというのが一般的ですが、バイクでも同様でした。
調べてみたら、バッテリーの重量だけで30kgもあるそうです。
定格出力と車両区分
ヤマハ E01 | ホンダ ADV150 | ホンダ PCX160 | |
定格出力 | 0.98kW | - | - |
車両区分 | 原付二種 | 普通二輪 | 普通二輪 |
電動バイクの車両区分は定格出力に基き、以下のとおりとなっています。
定格出力 (モーター) |
排気量 (エンジン) |
|
原付一種 | 0.6kW以下 | 50cc以下 |
原付二種 | 0.6kW超~1.0kW以下 | 50cc超~125cc以下 |
普通二輪 | 1.0kW超~20kW以下 | 125cc超~400cc以下 |
大型二輪 | 20kW超 | 400cc超 |
E01は定格出力0.98kWなので原付二種扱いになります。
ナンバープレートはピンクです。
最大トルク
ヤマハ E01 | ホンダ ADV150 | ホンダ PCX160 | |
最高出力 | 8.1kW(11PS)/5,000 rpm | 11kW(15PS)/8,500rpm | 12kW(15.8PS)/8,500rpm |
最大トルク | 30N・m(3.1kgf・m)/1,950 rpm | 14N・m[1.4kgf・m]/6,500rpm | 15N・m[1.5kgf・m]/6,500rpm |
最高出力は普通二輪のADV150、PCX160が当然上回っていますが、最大トルクはE01が約2倍となっています。
原付二種のE01は高速道路に乗れないので最高速度が100km/hとなっています。このため出力はそこまで必要ありません。
一方で加速に関わる最大トルクが非常に大きくなっています。この大きなトルクをモーターは回転し始め(発進、低速)から発揮できるため、力強い加速が期待できそうです。
航続可能距離
ヤマハ E01 | ホンダ ADV150 | ホンダ PCX160 | |
航続可能距離(km) | 104 | 353 | 354 |
ここです、一番気になるのは。
104kmというのは、普段バイクに乗っている人からするとあまりに短いと思います。
片道50kmのツーリングですらギリギリです。
そして充電スポットはガソリンスタンドのようにどこにでもあるわけではなく、バッテリー切れ=事実上の走行不能ということになります。
懸架方式はスイングアーム式
ヤマハ E01 | ホンダ ADV150 | ホンダ PCX160 | |
懸架方式(後) | スイングアーム | ユニットスイング | ユニットスイング |
スクーターではユニットスイング式が主流ですが、E01はスイングアーム式を採用しています。
一般的にスイングアーム式はスポーツバイクで採用されており、スポーティな走りを意識していることが伺えます。
電動となったことでレイアウトの自由度が増してこうした構造を実現できたのかもしれません。
試乗レビュー
ヤマハのお店でレンタルの手続きを済ませたらまずは車両の説明を受けます。
スマートキーによるキーレスエントリーとなっており、キーを差し込むことなくメインスイッチを操作できます。
この辺りはADV150やPCX160と同じですね。
スイッチをONに合わせ、ブレーキを握ってスターターを押すとメーター上の横長ライトが緑に点灯し走行可能となっていることを示します。
エンジン音がするわけではないので、ホントに走るのか若干不安になります。
走行モードは3種類
E01にはの3つの走行モードが用意されています。
走行状況に応じて選べる走行モード
◎PWR(パワーモード)
モーターのパワーを最大限に発揮するモード。登坂や、追い越し加速などに適しています。◎STD(標準モード)
一般路を走行するときに最適。30km/h~80km/hの常用域では当社125ccスクーター「NMAX」同等の動力性能があります。◎ECO(エコモード)
長距離走行に最適。バッテリーの消費を抑え、最高速約60km/hに制限したモードです。
ハンドル右のスイッチでいつでも切り替え可能です。
発進~加速
スロットルを回していくと、静かに走り出します。
加速はググッと力強く、何かこう、後ろから押されているような感じを受けます。
表現し辛いのですが、ADV150のように徐々にトルクが出てくるのとは明らかに異なります。
電動アシスト自転車に乗った時のような感覚と言うと伝わるでしょうか。
モーターは回転し始めから最大トルクを発揮できるというのはこういうことかと感心しました。
走行(街中)
レンタルするにあたって、平地と山道と両方を走れるようなコースを考え、40kmほど先の山頂の展望台を目指すことにしました。
まずは街中を走っていきます。
名古屋の道は交通量が多く信号待ちもしょっちゅうですが、走行や停止においてストレスを感じる部分はほとんどありませんでした。
モーター音はごくわずかなものですし、振動も少なく、静粛性はかなりのものです。
車両重量が重いことと、低重心で前後のバランスが良いためか、直線での走りは非常に安定しています。
気になっていた加速力は素晴らしいの一言。
60kmくらいまでは一気に加速していきます。
確かに150ccのADV150よりトルクがあると感じます。
エコモード、標準モード、パワーモードをそれぞれ試しましたが、街中ならエコモードで十分すぎます。
流れが早くなり60km/h以上出す必要がある時は標準モードで。
パワーモードは不要。
しかし結局切替えが面倒なので標準モード固定になる気がします。
走行(山道)
街中を抜け、ちょっとした山を抜けるいわゆるワインディングに入っていきます。
登りになってくると、さすがにエコモードでは少しパワー不足を感じます。
しかし標準モードにすれば余裕で登ります。
以前乗っていた同じ原付二種のクロスカブとは比べ物になりません。
パワーモードは登りで一気に加速したいときくらいしか出番が無いのではないでしょうか。
普段スポーツ走行をしているわけではないのでかなり主観的なものになりますが、コーナーをキビキビと気持ちよく曲がっていけます。
車体の重さは感じるものの、ハンドルの切れは良く、タイヤの接地感がしっかりとあるため不安を感じる部分はありません。
この辺はスイングアーム構造も一役買っているのかもしれません。
感心したのはレスポンスの良さです。
どの速度域でもスロットルを回すとすぐに加速するため、コーナーの立ち上がりが非常にスムーズです。
スロットルを戻すと回生ブレーキが作動しますが、ここもADV150に乗り慣れている身からしても違和感はありませんでした。
気になった点
総じて乗り心地や操作感は良く、うまいこと仕上げているなと感動しましたが、いくつか気になる点もありました。
残走行距離の表示
メーターを切り替えると残走行距離を表示することができます。
試乗中はずっとこれを表示していたのですが、あまり当てにならない気がします。
バッテリー残量100%で104km走れるので、ざっくり1%=1kmということになります。
平地を走っている間はそのとおりに残走行距離が減っていきましたが、登りに入ると減りが急激になります。
いきなり残り50kmから46kmになったときはさすがに驚きました。
逆に下りに入ると増えたりします。
恐らく直近の燃費(電費?)データから算出しているのだと思いますが、もうちょっと何とかならないものかと。
残走行距離は単純にバッテリー残量で把握した方が良いように思います。
残走行距離を気にしながら走るストレス
上記の登りでの残走行距離バグもありましたが、あとどれだけ走れるかを気にしながら走るのは思った以上にストレスでした。
帰りのルートをどうしようかと考える際に、距離を気にしてしまうんですよね。
本当はあっちの道を通りたいのに、残走行距離が心もとないから距離が短いこっちの道にしようみたいなことを考えるのは、まったくもって不本意です。
わたしが道具を使っているはずなのに、これでは道具に使われてしまっているではないですか。
重い
走行中は特に気にはなりませんが、取り回しの際には重さを感じました。
※リバース機能(バック)もあるのですが、イマイチ使い方がわからず使いませんでした。
これもずっと乗っていれば慣れるのかもしれませんが。
静かすぎる
E01は走行中も非常に静かです。静かすぎて周囲の人に気付いてもらえません。
住宅街で道路の真ん中をフラフラ歩いていた女子、山道で必死に自転車をこいでいたおじさん。
後ろからE01で接近していってもギリギリまで気付いてもらえずちょっとびっくりされました。
かと言ってホーンを鳴らすのはもっと驚かせてしまうので、ちょうど相手に気付いてもらえるくらいの音が出せると良いかなと思います。
まとめ
航続可能距離の問題は気になったものの、逆に言えば気になったのはそれだけで、走行性能は既に十分に実用レベルに達していると感じました。
最高速を無視すれば、ADV150より上だと思います。
電動バイクのポテンシャルを感じずにはいられませんでした。
正直、電気自動車がやたら持てはやされている風潮には疑問ですが、純粋に製品として「良いモノ」を突き詰めて行った先に電気自動車や電動バイクがあるのなら、これはこれで面白いことだと思います。
今後技術革新が進んで航続距離が延び、充電インフラも整備されてくれば、ラインアップも増えてくることでしょう。
電動バイクでロングツーリングに出るという未来もそう遠くないかもしれませんね。
レンタルはヤマハのお店で
E01のレンタルはヤマハのお店で可能です。
いつまでレンタルできるかわからないので、試したい時に試しておきましょう。
おまけ:ADV150での帰り道
ヤマハのお店まではADV150で行ったので、帰りももちろんADV150です。
E01を100km乗った後なので多少の違和感はありました。
軽くて扱いやすい反面、騒音と振動はどうしても気になってきます。
でもまあそれが良いという部分もあります。
「バイクに乗ってる感」って結構大事ですよね。